こんにちは!とんでもブルース(@guitar_blues_)です。
19世紀後半、労働時に黒人が歌い出したのが発祥と言われているブルース。
現在では世界中の人々によって歌われており、多くのブルースギタリスト、ブルースシンガーがいます。
今回はその中でも真のブルースマンたるスピリットを持った、Brushy One Stringという人物をご紹介します。
たった一本の弦を張ったギター
彼のギターには、何とたった一本しか弦が張られていません。
こちらの動画をご覧ください。
アコースティックギターの五弦の位置に、一本のみ弦を張っています。
リズミカルにギターのボディを叩きながら弦を鳴らし、歌う姿はまさにブルースマン。
弦が一本であることを全く感じさせないソウルフルで音楽的なプレイです。
Brushy One Stringとは何者?
彼はジャマイカのレゲエ・ブルースマンです。
ジャマイカのアンダーグラウンドミュージックを記録したドキュメンタリー映画『Rise Up』に、彼の「Chicken in The Corn」が起用されたことで多くの反響を呼び、彼の知名度を高めました。
その後、アメリカの主要な音楽フェスティバルなどにも出演を果たしています。
Brushy One String - Chicken in The Corn
ベースを弾くように、人差し指と中指で弦を弾いて音を出しています。
レゲエ、ブルース、ヒップホップ等様々な音楽要素が取り入れられているのがわかりますね。
彼は、かつて夢の中で一弦ギターをプレイするように男から言われたため、このようなギターを使用し始めたと語っています。
彼のブルースマンたる所以(ゆえん)とは
私が初めて彼の演奏を聴いた際、彼から他のブルースギタリスト・シンガーとは違う真のブルースを感じました。
以下でその理由を述べたいと思います。
既成の奏法に縛られないプレイ
決して状態が良いとは言えないギターで奏でられる彼のプレイは、何物にも縛られないという力強さを感じます。
また彼からは、1920年代頃のギターの奏法が確立されていない中、自分なりの奏法でギターを弾いていた、当時のブルースマンに近いオリジナリティを感じます。
「ギターの弦は6本無ければ音楽的なプレイができない」という私たちの既成概念を取り去る素晴らしいプレイです。
彼の演奏を聴いていくうちに、自然とリズムに合わせて体が動いてしまうのは彼がれっきとした「音楽」を演奏していることにほかなりません。
彼自身の内面
ブルースとはその人の内面からにじみ出てくるものです。
その点では、演奏者の生まれや育ってきた環境は非常に重要であると言えます。
例えば、裕福な家庭に生まれて何不自由なく育った人と、日々の食べるものにも困る生活を送ってきた人が歌うブルースがあるとします。
どちらにリアリティがあるでしょうか。
恐らく多くの人が後者であると答えるでしょう。
歌詞をただなぞるだけではブルースを歌えません。
成人するまで文字が読めず、市場にて独学でギターを弾いてきた彼の唸るような声、その佇まい 全体からブルースを感じることができます。
また、その雰囲気はどことなくテキサスのブルースマン、ライトニン・ホプキンスを想起させます。
Lightnin' Hopkins - Baby, Please Don't Go
ライトニンと同様、人生の悲哀や喜びを彼の歌声から感じ取ることができますね。
無駄のない洗練された音楽
音楽は時代と共に発展し、複雑化してきました。
次々に音が重ねられて、一曲がもつ「容量」が大きくなってきました。
そのような時代であっても、彼の演奏は私たちの心を掴みます。
声・弦の振動・ボディの打音という究極にシンプルな要素だけで生み出された彼の音楽は、不純物が一切含まれていない純粋さを私たちに感じさせてくれます。
まさに音楽の原点だと言えます。
音楽の素晴らしさを感じさせてくれる
彼の演奏を聴くと、音楽のあるべき姿のようなものが見えてきます。
故郷の市場での演奏を収めたこちらの動画をご覧ください。
彼の演奏に合わせて、楽しそうに踊る人や歌う人。
これこそが本来あるべき音楽の形だと気づかせてくれます。
まとめ
今回は、たった一本の弦でギターを奏でるBrushy One Stringをご紹介しました。
現在音源をいくつかリリースしており、以下のアルバムに代表曲「Chicken in The Corn」が収録されています。
また、Instagramアカウントでも彼の活動をチェックすることができます。
音楽の素晴らしさを教えてくれる彼の音楽を、ぜひ一度聴いてみて下さい。
それでは!
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