こんにちは!とんでもブルース(@guitar_blues_)です。
世の中には、ギターを作ることを仕事にしている人たちがいます。
彼らはギタービルダーと呼ばれ、日々より良いギターを作る為にその技術を高めています。
Fender Custom Shopのマスタービルダーと呼ばれる人たちが作るギターは、ギタリストの羨望の的ですよね。
彼らが作ったギターは、一般的なギターの価格と比較すると、非常に高価です。
そのような高値で販売されるギターを作る職人は、ギターを弾くのも上手いのでしょうか。
(ここではあえて「上手く」ギターを弾くというあいまいな定義にしています)
ギターそのものを知り尽くさなければ良いギターは作れないと考えると、ギタープレイの面も気になりますよね。
今回は、良いギターを作る為にはギターを上手く弾ける必要があるのかについて考えてみたいと思います。
Fenderの生みの親、レオ・フェンダーはギタリストじゃなかった!
今や世界一のギターカンパニーと言っても過言ではない、Fender。
公式サイトには、その創始者であるレオ・フェンダーの知られざる8つの真実として面白い記事が掲載されています。
上記の記事にも書かれていますが、なんとレオ・フェンダーはギタリストではなかったのです。
この事実はプレイヤーの間では有名な話ですね。
さらに彼はギターのチューニング方法も知らなかったというから驚きです。
しかし、楽器が全くできなかったわけではなくサックスは吹けたようです。
ギターを全く弾かない人間が、テレキャスターやストラトキャスターなどの名器を生み出したと考えると驚きですよね。
しかし、ギタリストではない彼だからこそ、固定観念に縛られない新たなギターの形を提示できたのかもしれません。
(当時はホローボディが主流だった中で、ソリッドボディを採用。またネックとボディを別々に製造して固定するデタッチャブル・ネック方式を採用するなど)
Fender Custom Shopのマスタービルダーはギターが上手?
Fender Custom ShopとはFender社内の一部門であり、熟練のビルダーによってFender初期のレプリカモデルが作られています。
その中でも、特にFender社に認められた熟練の技術をもつマスタービルダーと呼ばれる職人がいます。
彼らははたしてギターを上手く弾けるのか。調べてみました。
John Cruz
John Cruzによって製作された50s Strarocaster
2003年にマスタービルダーとなった彼は、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの名器「Number One」のレプリカモデルや、ジョン・メイヤーの「Black 1 」Stratocasterなどを製作しており、レリック加工に定評があります。
カスタムショップを代表するマスタービルダーであると言えるでしょう。
彼が自分で製作したギターを弾いている動画があります。
演奏動画を見てみると、パッション溢れるプレイでギターを上手く鳴らしていますね。
Yuriy Shishkov
Yuriy Shishkovによって製作された63 Stratocaster
2000年にカスタムショップのマスタービルダーとなった彼は、芸術性の高いギターを作ることで有名です。
彼にしか作れないゴージャスなギターは多くのギタリストに評価されています。
試奏と共に、製作したギターの紹介をしている動画です。
この動画を見る限りでは、上記のJohn Cruzと比べるとギターはあまり弾かないようですね。
その他のマスタービルダーの演奏動画はYoutube上にはアップされていませんでした。
彼らが弾くよりもプロギタリストが弾くほうがベターなのは当然でしょう。
マスタービルダー全員が「上手く」ギターを弾けるのかという点においては判断が難しいところですね。
日本を代表するギタービルダー、百瀬恭夫
日本人のアコースティックギタービルダーと言えば、Headwayの百瀬恭夫(ももせ やすお)氏でしょう。
Headwayは1977年の設立と、国内では歴史あるブランドです。
設立時からギターづくりに携わっていた彼は、リットーミュージックの「アコースティックギターマガジン 世界の名匠100」
(2018年7月27日発売)にも取り上げられています。
長年ギターを製作している彼も、レオ・フェンダー同様ギタリストではありません。
なんと彼と同様に、チューニングの方法も知らないとのことです。
しかし、彼の作るアコースティックギターはギタリストの間で高く評価されています。
まさに日本のレオ・フェンダーだと言えるかもしれません。
ギターを作り始めるきっかけは?
エレキギター、アコースティックギターが世界中に浸透している現在、ほとんどの場合はギターを作る前に一度はギターの演奏経験はあるでしょう。
ギターを弾く前から、ギターを作りたいと考える人はごく少数であり、全く弾けないビルダーはほぼいないと言ってもいいと思います。
世界的に有名なアコースティックギターメーカー、Taylorの創業者であるボブ・テイラーもインタビューで以下のように語っています。
――まずは、どういう流れを経て、1974年にテイラー・ブランドを立ち上げたのかを話していただけますか。
ボブ・テイラー:私は17才の時に、初めて自分でアコースティック・ギターを作ったんです。本当に酷いシロモノでしたけど、その頃に作った3本のうちの1本は、今でも持っています。私は、ギターを自作した時に、これこそがやりたいことだと気づいたんです。自分は、ずっとギターを作り続けたいと。
(中略)
――最初からアコースティック・ギターを作ったということは、元々アコースティック・ミュージックが好きだったのでしょうか?
ボブ・テイラー:好きでした。ジョン・デンバーやピーター・ポール&マリー、ジェイムス・テイラーといった人達が好きでしたね。自分もギターを弾きながら歌えると良いなと思ってギターを弾くようになりましたけど、プレイヤーとしては大したことなかったです(笑)。
このようにギターを弾いていて、その後ギターを作ってみるとその面白さに気づく場合は多いと思います。
しかし、生半可な気持ちで良いギターはできません。
彼のようにギター製作に情熱を注げる人物でないと、評価されるギターは作れないでしょう。
まとめ
当然ですが、有名になったギタービルダーはギターを弾く時間よりも作る時間の方が多いです。
また、ギターが本当に上手く弾けるビルダーであれば、プロギタリストとしても有名になっているはずです。
ギターを上手く弾けるビルダーだけが良いギターを作れるのであれば、Fender Custom Shopのマスタービルダーは全員プロギタリストに匹敵する技術を持っていることになりますが、実際はそうではありません。
Fender等の有名な楽器メーカーのビルダーでさえ、全員がギターを上手く弾ける訳ではないことから良いギターを作る条件は別にあると言えるでしょう。
そこで考えられる、良いギターを作る為に必要なことはプレイヤーの視点に立ってギターを考えるということでしょう。
なにも自分がギターを弾かなくても、信頼できるギタリストがそばにいれば、その人の意見を参考にすることもできます。
ギターの構造を詳しく知り、プレイヤーの求めているものをくみ取ることができるビルダーが、素晴らしいギターを作り出せます。
また、良いギターとは何かを常に模索し続けるあくなき探求心も欠かせません。
某ギタービルダーにお話を伺った際にもこのようにおっしゃっていました。
ギターは弾けるに越したことはないよ。
でももっと大事なことは、良いギターを作りたいという気持ちがいかに強いかだと思うね。
したがってギタービルダーの腕前とギタープレイの腕前は関係がないと言えるでしょう。
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